乾性潤滑被膜塗装
当社の機能性塗料塗装には耐熱だけではなく、乾性潤滑被膜塗装というものがあります。乾性潤滑被膜とは、塗料を製品に塗布し、焼成をかけて塗膜にするだけで、潤滑油を塗った時と同等の潤滑性の機能がある塗膜です。
シートベルトの内部部品の塗装を、乾性潤滑被膜塗装の施工方法で実施しています。この塗装は、スプレーガンなどを使用した噴霧塗装方式ではなく、転写塗装方式といいます。転写塗装の代表的な例は、外壁を塗るローラー塗装があります。
この写真は、「タンブラー塗装機」です。この塗装機はスイッチを入れると回転し、その回転によって塗装していきます。
塗装のメカニズムは以下のようになります。
この工程で、タンブラー塗装機内面と、ショット玉に塗膜を付着させます。
ショット玉②ワークを入れ、15分回転させます。次にタンブラー塗装機壁面とショット玉に付着している塗料を、ワークに転写させます。この工程で、3μm程度の塗膜が形成されます。(焼成後の仕上がり塗膜の厚さ)
タンブラー内部(塗装完了)
③ショット玉と製品を分け、焼成用バケットに製品を入れ焼成します。
塗装完了品
ここで使用している塗料は、株式会社STT社製の「ゾルベスト342+」という塗料で、モリブデン鋼が塗料に含まれている特殊塗料です。
製品同士が接触する部分に使用され、塗膜は非常に硬く、摺動性に優れた機能を発揮します。当社で塗装している方法のタンブラー塗装機の塗布では、3μm程度の塗膜しか形成できないので、防錆性は発揮できませんが、15μm以上の形成するスプレー塗装では、防錆性も発揮され、非常に高度な機能をそなえた塗料といえます。
摺動性が必要な個所には通常グリスを塗布しますが、乗用車などの室内の温度が高温になる場所は、グリスが溶けて流れてしまったり、また、グリスを塗布しても、一回製品が滑ってしまえば、グリスが片側に寄ってしまう難点があります。その点、この乾性潤滑被膜は、膜厚設定、製品同士の当たる圧力など勘案しなくてはならないことがありますが、塗装面は長期間滑る状態を保ちます。国内自動車メーカーなどに幅広く採用されています。
塗装をする際に、使用する塗装治具は、使用し続けると塗料がどんどん付着して太くなり、扱いにくくなります。
この様な時には、剥離屋さんに治具の塗料剥離を行ってもらいます。しかし、この乾性潤滑被膜塗料は塗膜が非常に硬く、溶剤浸漬ではなかなか剥離できなく、特殊な工程を経て剥離をしてもらいます。
製造数は一時期よりは減りましたが、この様な特殊用途の機能性塗料も当社では塗布し、お客様に提供しています。